妖(あやかし)狩り・参~恋吹雪~
「えっと・・・・・・」

 その場から報告しようとした烏丸を、そはや丸が物凄い目で睨み付ける。
 局の中には、右丸はともかく、鈴虫もいるのだ。
 またヒトの前で喋ったら、今度こそ滅されかねない。
 烏丸は、慌てて羽で嘴を押さえた。

「・・・・・・あの馬鹿烏天狗が」

 ぼそ、とそはや丸が悪態をつく。
 冷や冷やしながらも、呉羽は烏丸に向かって両手を差しだした。
 烏丸が飛び込んでくる。

「ご、ごめんなさい~」

 呉羽の腕の中で、烏丸は涙目でそはや丸を見上げ、小さい声で謝る。
 呉羽は、よしよしと烏丸の頭を撫で、どうだった? と問うた。

「うん、邪悪な感じは、もうしないよ。でも、ちょっと妖気が残っちゃったみたいね。そはや丸のだろうね」

 僅かだけどね、と言う烏丸の報告に、そはや丸が嫌そうな顔をした。

「口移しだからな。多少はしょうがねぇ」

「ただの邪気だからな。そはや丸には、食い足りないぐらいか」

 何気に物騒なことを言い、呉羽は右丸を手招いた。

「これで女官殿は、元に戻ろう。ちょっとしばらくは、身体の調子が思わしくないかもしれないけど、それは、まぁ・・・・・・今回の名残というか。一応護符を渡しておきたいんだが、生憎持っているものは、血で汚れてしまって効力がない。屋敷に帰って作り直すから、悪いが取りに来てくれないか?」

「あ、はい。ではすぐに」

 右丸がすぐに従おうとする。
 が、そはや丸が、その肩を押し戻した。
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