妖(あやかし)狩り・参~恋吹雪~
「でも・・・・・・」
渋る鈴虫を制し、呉羽は立ち上がると、もう一度頭を下げ、そはや丸の助けを借りて、簀の子を降りた。
ようやく鈴虫は、手燭を持って呉羽を先導した。
「それでは右丸に送らせましょう。謝礼ですが、それは後ほどお届けする手はずとなっておりますので」
「わかりました。じゃあお願いします」
車宿りまで来ると、右丸が牛車を用意して待っていた。
その頃には、呉羽の足取りは、かなり怪しくなっていた。
頑張って歩いているが、一歩踏み出すたびに、胸にずきずきと痛みが走る。
骨を痛めたらしかった。
車宿りで鈴虫に礼を述べて別れ、呉羽はふらふらと牛車に近づく。
右丸が、心配そうに手を差しだした。
「すまないな。この分じゃ、帰ってすぐには、護符を作れそうもない。幸い女官殿も、早急に護符が必要な状態ではないはずだ。あくまで念のためだし」
ふらふらと、差し出された右丸の手を取ろうとした呉羽だったが、その手は、ぐい、と冷たい手に阻まれた。
そのまま、ふわりと抱き上げられる。
「そんなふらふらじゃ、危ないぜ」
軽々と呉羽を抱え上げ、そはや丸がそのまま牛車に乗り込む。
その横で、右丸が呆気に取られたように、二人を見つめる。
ちらりと右丸を見たそはや丸との間に、火花が散った。
渋る鈴虫を制し、呉羽は立ち上がると、もう一度頭を下げ、そはや丸の助けを借りて、簀の子を降りた。
ようやく鈴虫は、手燭を持って呉羽を先導した。
「それでは右丸に送らせましょう。謝礼ですが、それは後ほどお届けする手はずとなっておりますので」
「わかりました。じゃあお願いします」
車宿りまで来ると、右丸が牛車を用意して待っていた。
その頃には、呉羽の足取りは、かなり怪しくなっていた。
頑張って歩いているが、一歩踏み出すたびに、胸にずきずきと痛みが走る。
骨を痛めたらしかった。
車宿りで鈴虫に礼を述べて別れ、呉羽はふらふらと牛車に近づく。
右丸が、心配そうに手を差しだした。
「すまないな。この分じゃ、帰ってすぐには、護符を作れそうもない。幸い女官殿も、早急に護符が必要な状態ではないはずだ。あくまで念のためだし」
ふらふらと、差し出された右丸の手を取ろうとした呉羽だったが、その手は、ぐい、と冷たい手に阻まれた。
そのまま、ふわりと抱き上げられる。
「そんなふらふらじゃ、危ないぜ」
軽々と呉羽を抱え上げ、そはや丸がそのまま牛車に乗り込む。
その横で、右丸が呆気に取られたように、二人を見つめる。
ちらりと右丸を見たそはや丸との間に、火花が散った。