妖(あやかし)狩り・参~恋吹雪~
「まぁ、おほほほ。何と色気のない。殿方が花の枝を送るのは、恋しい女人(にょにん)に送るために決まっているではありませぬか。硬く締まった蕾が花開くように、心を開いて欲しいとか、まぁ、そういった意味ですわ」
最後のほうで頬を赤らめ、ほたるが言う。
ぽかんと、阿呆のように口を開けて、彼女の説明を聞く呉羽とは違い、ほたるのほうは、そはや丸のほうへと足を踏み出した。
「あなた様のお気持ちは、わかっておりましてよ」
ほたるは恥じらいつつもそう言って、そはや丸の胸に手を伸ばす。
「・・・・・・そはや丸? お前、女官殿と知り合いなのか?」
「知らねぇな」
何となく甘やかな雰囲気漂うそはや丸とほたるの間の空気は、そはや丸の一言で凍り付いた。
ほたるは、そはや丸のほうに伸ばした手をそのままに、固まっている。
「ほれ。お前もちょっとは花を愛でろ。もうちょっとしたら、花が開くぜ」
ばさ、と枝を呉羽に渡す。
その瞬間、ふわ、と僅かに良い香りがし、呉羽も思わず顔を綻ばせた。
呉羽は単に梅の良い香りに嬉しくなっただけだが、彼女のすぐ後ろでは、右丸が顔を引き攣らせており、ほたるが目を見開いている。
「そだな。梅は剪定しないと、実も上手く付かないしな」
すっかり機嫌の直った呉羽は、歩き出したそはや丸の後を追いながら、暗くなっている二人を振り返った。
「ああ、折角だから、寄っていけよ。烏丸も、もっと右丸といたいだろうし」
最後のほうで頬を赤らめ、ほたるが言う。
ぽかんと、阿呆のように口を開けて、彼女の説明を聞く呉羽とは違い、ほたるのほうは、そはや丸のほうへと足を踏み出した。
「あなた様のお気持ちは、わかっておりましてよ」
ほたるは恥じらいつつもそう言って、そはや丸の胸に手を伸ばす。
「・・・・・・そはや丸? お前、女官殿と知り合いなのか?」
「知らねぇな」
何となく甘やかな雰囲気漂うそはや丸とほたるの間の空気は、そはや丸の一言で凍り付いた。
ほたるは、そはや丸のほうに伸ばした手をそのままに、固まっている。
「ほれ。お前もちょっとは花を愛でろ。もうちょっとしたら、花が開くぜ」
ばさ、と枝を呉羽に渡す。
その瞬間、ふわ、と僅かに良い香りがし、呉羽も思わず顔を綻ばせた。
呉羽は単に梅の良い香りに嬉しくなっただけだが、彼女のすぐ後ろでは、右丸が顔を引き攣らせており、ほたるが目を見開いている。
「そだな。梅は剪定しないと、実も上手く付かないしな」
すっかり機嫌の直った呉羽は、歩き出したそはや丸の後を追いながら、暗くなっている二人を振り返った。
「ああ、折角だから、寄っていけよ。烏丸も、もっと右丸といたいだろうし」