妖(あやかし)狩り・参~恋吹雪~
「ああ。痛たた。ちょっと待って・・・・・・」

 烏丸に手を伸ばそうとし、呉羽は胸を押さえて身体を丸めた。
 そこで初めて、烏丸は呉羽が裸だということに気づく。

 えっと、と、背後を振り返ってみると、右丸も驚いたような顔で固まっていた。
 始めは真っ暗だったので、わからなかっただろうが、今は烏丸自身が灯を入れてしまった。
 部屋の中は明るい。

「・・・・・・ほら呉羽。布を巻くからな」

 そはや丸が、あえて優しく呉羽の背に手を回して抱き起こした。
 が、腕は温めていない。
 呉羽は、ひゃ、と小さく叫んで、思わずそはや丸の胸にしがみついた。

 そはや丸の、素肌の腕は冷たいが、着物の胸は冷たくない。
 ただそれだけの理由だが、目論見通りの呉羽の反応に、そはや丸はほくそ笑んだ。

「おっと悪い。あんまり動くなよ。傷に響くぜ」

 うう、と唸って、呉羽は力なくそはや丸に身を委ねている。
 腹筋を使った拍子に、傷が痛んだのだろう。

 裸の呉羽が、そはや丸に抱かれている図だ。
 右丸の様子など、わざわざ振り返って見なくてもわかる。
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