妖(あやかし)狩り・参~恋吹雪~
 そはや丸は、手早く己の帯を解くと、上衣を脱いで呉羽に被せた。

「とりあえず、これを着ておけ。ていうかお前、護符作る気か? 座ってるのも辛ぇだろうに」

「ん・・・・・・でも折角ここまで来てもらったんだし。こうしてると、大丈夫だから」

 己にもたれて言う呉羽に、そはや丸は、おや、と思った。
 何となく、最近呉羽は怪我をすると、やけに甘えるような。
 それとも己が呉羽を意識しているから、ちょっとしたことでもそう思ってしまうのか。

 いつもと違う感情に浸りそうになったそはや丸は、ふと棒立ちになっている右丸に気づき、にやりと口角を上げた。
 一瞬で、いつものそはや丸に戻る。

「しょうがねぇな。よいしょっと」

 もたれる呉羽を抱き寄せ、羽織らせた着物の合わせを閉じてやる。
 呉羽が着物を着たことで、右丸はほっとしたようだが、状況はいただけない。
 その場に膝を付き、少し身を乗り出した。

「あの、呉羽様。大丈夫なのですか? 私はとりあえず、呉羽様のお加減が気になって来てしまっただけで、護符は後ほど、また取りに伺いますよ。早急に必要なものでもないのでしょう?」

 護符を作らないでも良いなら、呉羽は大人しく寝ておけばいい。
 そはや丸に抱かれるように支えられなくてもいいわけだ。
 
 呉羽の体調を心配しているのも事実であるが、そはや丸から呉羽を引き離したい思いがあるのも事実である。
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