妖(あやかし)狩り・参~恋吹雪~
「おい、折角わざわざ来てくれたんだ。確かに何の力もない右丸を、今すぐ外に放り出すわけにはいかないだろ」

 火花を散らす二人を宥め、呉羽はとりあえず、そはや丸を黙らせると、ふぅ、と一つ息をついた。

「じゃあすまないが、一旦休ませてもらう。とはいえ、予備の夜具とか、ないんだよな」

「そんな奴に、そこまでしてやらんでも・・・・・・」

 言いかけたそはや丸だが、ふと考えた。
 そして、呉羽がいつも使っている衾を引っ張った。

「おい、これを使え」

 いつにないそはや丸の態度に、右丸はもちろん、呉羽も目を丸くする。
 しかも、衾は一枚しかない。
 今しがた、呉羽も『予備の夜具はない』と言ったではないか。

「え、で、でも、それを私が使ってしまうと、呉羽様が・・・・・・」

 きょとんとする右丸に、衾を投げて寄越しながら、そはや丸は、心底楽しそうに口角を上げた。

「何、気にすんな。呉羽は俺が暖めてやる」

「・・・・・・!!!」

 右丸の表情が氷結する。
 そはや丸は、そろ、と呉羽を床に下ろすと、立ち上がって部屋の隅の几帳を引き摺り、右丸と呉羽の間を仕切った。
 そして、当然己は呉羽の元へ。
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