妖(あやかし)狩り・参~恋吹雪~
「じゃあな。まぁゆっくり休め」

 にやりと笑い、そはや丸は燭台の明かりに息を吹きかけた。
 闇が落ちる。

 几帳の向こうに消えた、何とも言えない茫然とした右丸の表情を思い出し、そはや丸は見えないのを幸い、にやにやと笑みを浮かべながら、呉羽を抱き寄せた。
 呉羽が、もぞりと動く。

「おい。お前が暖めるって、どうするつもりだよ。自分で体温はないって言ったの、忘れたのか?」

 ぼそ、と囁く。
 そはや丸は、ついでに持ってきた単を呉羽にかけると、ふん、と鼻を鳴らした。

「お前こそ、忘れてるんじゃないのか。こうやって引っ付いておけば、お前の体温で俺も温かくなる」

「・・・・・・暖めてるわけじゃないけど。ま、確かに寒くはないけどな」

 嫌がるでもなく、呉羽は、ぺと、とそはや丸に引っ付く。
 しばらく黙って呉羽を抱きしめていたそはや丸だが、再びぼそ、と口を開いた。

「なぁ。お前がそんなに引っ付いてくるのは、珍しいよな」

「だって、引っ付いておかないと、お前、すぐに冷めるし」

 もぞもぞと単を引っ被り、呉羽は目を閉じた。
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