妖(あやかし)狩り・参~恋吹雪~
「わ、私は、ずっと呉羽様をお慕いしておりました。あの、呉羽様は、そはや丸殿のことを、お慕いしているのでしょうか」

「・・・・・・」

 しばらくそのまま呉羽を抱きしめていた右丸だが、抱きしめた呉羽は、何も言わない。

 訝しく思い、右丸は、そろ、と呉羽を覗き込んだ。
 そこで初めて、呉羽がぎゅっと目を瞑って、小さく震えているのに気づく。

「く、呉羽様。どうしました? 寒いのですか?」

 再び右丸が、呉羽を抱き寄せた。
 が、ますます呉羽は小さくなる。
 おろおろと焦る右丸に、呉羽は寄り添ったまま、小さく呟いた。

「・・・・・・これが、人肌の温かさなのか」

 逃げるでもなく寄り添ってくる呉羽に、右丸はもう、どうにかなってしまいそうなほど舞い上がり、彼女の小さな呟きは耳に入らない。
 勢いに任せ、右丸はそのまま呉羽と共に、床に転がった。
< 179 / 200 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop