妖(あやかし)狩り・参~恋吹雪~
 その頃、そはや丸は屋敷の屋根の上で寝転がっていた。
 烏丸が、落ち着きなくそわそわと、そはや丸の胸の上できょろきょろしている。
 右丸を呉羽の傍に連れて行った直後から、そはや丸はずっとここで、この状態だ。

「・・・・・・そはや丸ぅ。ねぇ、いいの?」

 我慢できなくなったように、烏丸が口を開いた。

「お姉さんは起きたけどさぁ、右丸、お姉さんを抱いてたよ?」

「・・・・・・俺が、そういう風に持っていったんだ」

 怒るでもなく淡々と、そはや丸は言う。

「違うよぅ。そうじゃなくて、もう右丸、我慢できなくなっちゃってるよ? お姉さんが起きてからも右丸から離れないからさぁ、右丸、すっかりその気になっちゃってさ。お姉さんに、接吻してたものぉ。あの状態で、接吻だけじゃすまないよ?」

 呉羽が目覚めるまでは、烏丸は傍にいたが、何となく右丸が呉羽を抱こうとしたときから、部屋を出た。
 呉羽が本気で嫌がったら、烏丸としても二人の間に割って入るつもりだったが、何か呉羽が、そう拒否している風でもないように見えた。

 烏丸は、右丸の気持ちもそはや丸の気持ちも知っている。
 呉羽の気持ちは今ひとつわからないが、だからこそ、返っていたたまれなくなったのだ。
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