妖(あやかし)狩り・参~恋吹雪~
「そはや丸は、右丸にお姉さんをあげたわけじゃないでしょ」

 呉羽に手を出したら殺すと凄んだそはや丸だ。
 今の下の状況に、気づいていないわけではあるまいに、烏丸の言葉にも、怒る素振りはない。

「それは呉羽次第だな。いくら俺が呉羽を我が物にしたいと思っても、それはやはり無理がある。暖めてやることさえ出来ないしな。そういうことがあるたびに、俺はヒトとは違うと思い知らされる」

 ん~、と烏丸は、そはや丸の胸の上に蹲って考えた。
 命あるモノとないモノとの恋など、幼い烏丸がちょっと考えただけでも、無理があるとわかる。

「でもさぁ、そはや丸は、ただのモノじゃないでしょ?」

 烏丸の言葉に、そはや丸が視線を胸元にやった。

「ただのモノは、そんなべらべら喋らないし、一人で動き回ったりしないよ? そはや丸は刀だけど、ヒトの形も取れるしさ。何て言うのかな・・・・・・そはや丸の、その力っていうのは、命なんじゃないかしら」

 無表情だったそはや丸が、訝しげに烏丸を見た。
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