妖(あやかし)狩り・参~恋吹雪~
「俺が生きてるだと?」

 そはや丸の腰の辺りで、烏丸は顔を上げた。

「生きてないモノが、そんなべらべら喋るわけないでしょ」

 呆れたように言う烏丸に、そはや丸は相変わらず怪訝な顔を向ける。
 烏丸は立ち上がり、ばさ、と羽を羽ばたかせた。

「そはや丸は、考えすぎなのよ。死ぬことがないなら、むしろ良かったじゃない。ずぅっとお姉さんの傍にいられるのよ? お姉さんだって安心じゃない。自分より先に、そはや丸が死ぬことはないんだもの。そはや丸は、お姉さんを悲しませることは、ないってことよ?」

「・・・・・・」

 何か言おうと口を開いたまま、そはや丸は固まった。
 じんわりと、烏丸の言葉が、不思議な温かみを持って染みてくる。

「お前は、右丸の味方じゃなかったのか」

 話を逸らすように言ったそはや丸に、烏丸は、ふぅ、と羽を頬(?)に当てた。

「仕方ないじゃない・・・・・・。そはや丸は、お父さんだもの」

 ぶ、と噴き出し、そはや丸は、がしっと烏丸の頭を掴んだ。
 そのまま、ただ烏丸をがしがしと撫で回す。

 よろよろとしていた烏丸が、ふと下に目をやった。
 簀の子に、人が出てきた。
< 185 / 200 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop