妖(あやかし)狩り・参~恋吹雪~
「・・・・・・右丸か・・・・・・」

 呟き、呉羽は再びそはや丸の胸に頬を付ける。
 どうしたもんか、と、そはや丸は考えた。
 どうも、どこか思うところがあるらしい。

 先程着替えさせたときの態度もおかしいし、今この大人しさも珍しい。
 右丸と何があったのか、問い質そうかと考えていると、呉羽がぽつりと呟いた。

「お前は、ヒトより冷たいな」

 何を今更、と、そはや丸は眉を顰める。

「右丸にさ、抱かれて、ヒトの温かさってのを、初めて知ったんだ」

 ぐ、とそはや丸が唇を噛む。

「ヒトって、あんなに温かかったんだな」

「・・・・・・そうだろうな。温石(おんじゃく)代わりになるし」

「だから、右丸を私に添わせたのか」

「添わせたわけじゃない。・・・・・・俺が出来るなら、あんな奴に頼まん」

 呉羽の肩を抱く手に力を入れ、そはや丸は言った。
 冷静に言ったつもりでも、どうしても悔しさが言葉に滲んでしまう。
 呉羽は、それに少し笑ったようだ。
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