妖(あやかし)狩り・参~恋吹雪~
「お前がさ、前に言ったことが、ちょっとわかったんだ」

 単の合わせを握って、呉羽が言った。

「男女の仲っていうか。想う人のことを抱きたいと思うとか。相手を愛しく想う、とか」

「・・・・・・右丸に抱かれて、それがわかったってのか。あいつ、お前を抱いたのか」

 少し怒りの籠もったそはや丸の声に、呉羽は首を振った。

「右丸は、そのつもりだったみたいだけど。傷が痛んでさ。でもな、左馬頭(さまのかみ)のときみたいに、相手をぶちのめしても逃げたいと思うほど、嫌ではなかった」

「お前は・・・・・・」

 そはや丸の声が硬くなる。

「右丸のことを、好いているのか? あいつになら、抱かれてもいいと思うのか?」

 呉羽が顔を上げた。
 じ、とそはや丸を見る。

「お前はさ・・・・・・どう転んでも、刀だよな」

 呉羽の言葉が、そはや丸の胸を抉る。
 しかし呉羽は、そはや丸に身を寄せて、彼にぺとりと寄り添った。

「でもさ、なのに、お前にはちゃんと、心がある。その上で、右丸と同じように、私を想ってくれてる、ということ・・・・・・かな」

「呉羽・・・・・・」
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