妖(あやかし)狩り・参~恋吹雪~
「仕方ないだろ。でもできるだけ、移しの術でやるようにする」

 言いながら、呉羽はそはや丸の首に腕を回した。
 少し、顔を近づける。

「・・・・・・そういえば、お前、陰の気が残ってるんだったな」

 そう言う呉羽に、そはや丸も顔を近づけた。

「お前だって、妖気が残ってる」

 お互いもっともらしい理由をつけて、二人は笑い合った。
 そうして、呉羽は、ちら、とそはや丸を見、軽く目を閉じた。
 唇に、何かが触れる。

 呉羽が目を開くと、そはや丸が、至近距離で笑った。
 いつもの見慣れた、底意地の悪い笑みではない、優しい笑み。

---いや、単に私がこいつの性格に慣れてしまっただけかもしれんがな---

 ひそりと思い、呉羽はまた、ふふっと笑った。
 今までとは違う空気が、二人の間に流れる。

 再び、二人の顔が近づく。

---接吻は、好いた人とするもん、か。なるほどな---

 ちょっと気恥ずかしく思いつつ、呉羽はそはや丸の接吻を受け入れた。
 気のやり取りでもない接吻は、不思議な感覚を呉羽にもたらした。
 身体から力が抜ける。
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