妖(あやかし)狩り・参~恋吹雪~
「この感覚は、妖故か? それとも、好いたお前だからなのかな」

 そはや丸にもたれながら、呉羽は喘ぎつつ言った。
 そはや丸は呉羽を床に降ろしながら、照れたように、さりげなく目を逸らす。

「右丸にされても、そう感じなかったのか」

「そうだな・・・・・・。右丸は何かさ、不思議だったんだ。今みたいな不思議さじゃなくて、ヒトの不思議さというか。体温っていうものの温かさとかね」

 言いながら、呉羽は手を伸ばして、そはや丸の腕を掴んだ。

「こういうのに慣れてるからさ、人間があんな温かいものだとは思ってなかったんだ」

「変な奴だな。自分を考えれば、わかることだろ」

「意識してなかったんだ。抱きしめられると、ひやりとする感覚が普通だと思ってたからさ」

 ふふっと笑って、呉羽はそはや丸の腕を掴んだ手を、くい、と引っ張った。
 そはや丸がつられて身を呉羽のほうに倒すと、呉羽はまた、そはや丸に抱きつく。

「でもやっぱり、こっちのほうが、私は安心するんだ」

「・・・・・・お前は俺をヒトのようだと言うが、お前は妖のようだよな」

「やっぱり私たちは、似た者同士だよな」

 そう言って笑い合い、ふ、と目を合わすと、どちらともなく二人は唇を重ねた。


*****終わり*****
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