妖(あやかし)狩り・参~恋吹雪~
「まぁまぁ。そんな物騒なこと言うもんじゃない」

「お前は今回、自分が働かなかったから、そんな悠長にしていられるんだ。お前自身が動いてたら、同じこと言うだろうが」

「そうかもしれないけど」

 頬に手を当てて首を傾げる呉羽に、右丸は目を剥いた。
 崇高な巫女姫である呉羽までが、『坊主に身を売って払え』と言うのか。

 が、すぐにそんな考えを改める。
 そんなはずはない。
 この美しく清らかな巫女姫が、まさかそのようなことは、口にすまい。

 ・・・・・・右丸の中では、やはり呉羽は現人神(あらひとがみ)とも言うべき、至上の存在なのだ。

「でもほらぁ、烏丸に免じて、許してやってくれよ。お前も烏丸は、可愛いと思うだろ」

 そう言って、呉羽は烏丸をそはや丸の顔の前に突き出す。
 渋い顔のそはや丸に、烏丸はまた泣きそうになるが、声を上げたら焼き鳥にされるし、声を出せないということは、ごめんなさいと謝ることもできない。
 しくしくと泣き続ける烏丸に、そはや丸は口を尖らせた。

「・・・・・・そいつは良いんだ。何だかんだと働いてるからな」

 つん、と顔を背けて言う。
 そはや丸にしては珍しい。

 何だかんだと手荒く扱っていても、そはや丸だって烏丸を気に入ってるんだよ、と小声で言い、呉羽は烏丸を、よしよしと撫でた。
< 22 / 200 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop