妖(あやかし)狩り・参~恋吹雪~
 確かにそはや丸が右丸よりも烏丸に甘いのは、同じ妖(あやかし)だということもある。
 が、それよりも実は、呉羽の存在が大きいのだ。
 呉羽が烏丸を気に入っているから、そはや丸は烏丸の存在を認めている。

 それに加え、烏丸は呉羽を慕っているとはいっても、右丸のような恋慕の情ではない。
 だからなのだ。

 もちろんそこまでは、呉羽はもちろん、そはや丸自身も気づいていないことなのだが。

「けど、てめぇはまさに、ただ助かっただけだろ。命を救ってやったのに、礼もなしとは良い度胸じゃねぇか」

 再びそはや丸は、ぎろりと右丸を睨む。
 あわわ、と青くなる右丸だったが、不意にそはや丸と右丸の間に、ほたるが割り込んだ。

「ほほほ。礼など、わたくしで良いではありませんか」

「あ?」

 一層深く眉間に皺を刻むそはや丸に、ほたるは少しにじり寄った。

「あなた様が、仰ったではありませんか。右丸のところに来てくれたのも、わたくしのためでしょう?」

「・・・・・・何言ってやがる・・・・・・」

「あの夜、わたくしを守ろうとする右丸を押しのけてまで、あなた様はわたくしを求めたではありませんか。ああ、このわたくしが、地下人などに心を奪われたのも、あなた様の、あの熱い想いのためですのよ・・・・・・!」

 あこめ扇を握りしめて、ほたるは身悶えせんばかりに熱く語る。
 そはや丸は、呆気に取られたように、目の前のほたるを眺めた。
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