妖(あやかし)狩り・参~恋吹雪~
 元々見目は麗しいと言っても過言でない呉羽だ。
 今は状況がわからず、どこか頼りなげな雰囲気だ。
 それがまた、普段は見られない態度なもので、右丸は食い入るように呉羽を見つめた。

 と、呉羽しか映っていなかった右丸の視界に、不意に横から手が伸びる。

「お前が心配することじゃねぇよ」

 そはや丸が、呉羽の肩に手を回して、優しく言ったのだ。
 右丸の顔が強張る。

「そうなのか? なら良いけど」

 呉羽も特にそはや丸の手を気にすることなく呟く。
 彼女の腕の中では、烏丸が目だけできょろきょろと、呉羽以外の三人を眺めている。

 そはや丸は、ちらりと目の端で右丸を捉えながら、含み笑いをした。
 そはや丸が呉羽といちゃいちゃするのは、右丸を苛めるためだ。

 というより、別にいちゃいちゃしているわけでもなく、事実を、違うように取れる風に言うだけだが。
 故に、鈍感な呉羽は、そはや丸の態度をそんな色恋方面には取らないし、反対に右丸はどうしても、そっち方面にしか取れないのだ。

 案の定固まった右丸にほくそ笑むそはや丸だったが、今はほたるもいるのだ。
 右丸は一人で落ち込むだけだが、ほたるは、そうではない。
 眦を吊り上げて、呉羽を凝視する。
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