妖(あやかし)狩り・参~恋吹雪~
「そはや丸っ・・・・・・。そ、その女子は、一体あなたの何ですのっ」

 握りしめられたあこめ扇が、ほたるの手の中でみしみしと音を立てる。
 そこで初めて、そはや丸はほたるの存在を思い出した。
 
 右丸から烏丸を引き出す媒体にするために、そはや丸はほたるに口移しで己の妖気を送り込んだ。
 結構な量の妖気をただのヒトに送り込まないといけないため、ゆっくりと移す必要があった。

 ゆっくりと口移しで送り込む、ということは、それなりの時間、接吻しないといけないということだ。
 途中でほたるが目覚めてしまったため、急ぐ必要があったのもあり、適当にそはや丸は、ほたるを口説いて接吻に持ち込んだ。

 元々ほたるは、そはや丸に惹かれていたこともあり、その接吻が駄目押しとなったようだ。
 すっかりほたるは、そはや丸に心奪われてしまっている。

「あなたはわたくしに会うために、危険を顧みずお屋敷にまで来られたじゃありませぬか。あの熱い夜を、忘れたわけではありますまい」

 そはや丸が左大臣家に出向いたのは、呉羽に命じられて烏丸を助けるためだけが目的だ。
 どこでどう変換されたのか、ほたるの中では、そはや丸はほたるに会いに屋敷に出向いたことになっているらしい。

「・・・・・・そはや丸ぅ、ほんとに大丈夫なのか? 女官殿・・・・・・」

 呉羽が再び、そはや丸を見上げる。
 先程打ちのめされた右丸には、そんな呉羽の態度は、まるでそはや丸に甘えているように見えてしまう。
 そしてほたるは、またも眦を吊り上げ、びしっとあこめ扇を呉羽に突きつけた。
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