妖(あやかし)狩り・参~恋吹雪~
「何を言うのよ。わたくしが自らこのようなところに出向いたことだって、わたくしからしたら、恥をかなぐり捨ててるのよ。そうまでしても、わたくしはこのおかたに会いたかった」

 そう言うと、ほたるは、がばっとそはや丸へ身を投げ出した。

「このわたくしの想い、あなた様ならわかってくださいますでしょ? あなた様も同じ想いなはずっ」

 ほたるがそはや丸にしがみついたお陰で、呉羽は突き飛ばされる形になり、そはや丸から少し離れたところに尻餅をついた。

「・・・・・・」

 茫然と、呉羽はそはや丸とほたるを見る。
 見ようによっては、そはや丸を奪われて呆けているように見えなくもない。
 ほたるは、そはや丸にしがみついたまま、ちらりと呉羽を見、意地悪く口角を上げた。

「・・・・・・お姉さん、大丈夫?」

「あ、ああ・・・・・・」

 尻餅をついた拍子に、呉羽の膝から床に降りた烏丸を再び抱き寄せ、落ち着かない様子で、呉羽は視線を彷徨わせた。
 右丸は、そんな呉羽を見ながら思案する。

---そうだ、そはや丸はあのときだって、ほたる様を口説いていた。そはや丸は、ほたる様に心が移ったんだろうか---

 そはや丸が烏丸救出に右丸の元へ出向いたときに、ほたるを媒体に使う一部始終を、右丸はその目で見ている。
 もっとも見ていたところで、右丸には媒体どうこうということはわからないので、ほたる同様、そはや丸が単にほたるを口説いたとしか思えないのだが。

 しかも右丸の目の前で、そはや丸はほたるに接吻したのだ。
 初心な右丸は、目の前でそんなことをされたら、もう思考回路は正常には働かない。
 その後そはや丸が何か言っても、頭になど入らないのだ。
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