妖(あやかし)狩り・参~恋吹雪~
---巫女様・・・・・・。気高い巫女姫様に、そのような悲しげな表情は似合いません。ああ、僕がその傷を癒して差し上げられたら・・・・・・---

 何が起こっているのか理解できず、どうしたもんかと考えている呉羽を、右丸は違う風に理解しつつ、切なげに見つめる。
 呉羽は、ちら、とそはや丸を見、そして右丸に手招きした。

「・・・・・・とりあえず、右丸、こちらへ」

 そう言って、烏丸を抱いたまま部屋を出ていく。
 右丸がすぐに後を追う。

「おい、呉羽・・・・・・」

 そはや丸が呼び止めようとしたが、くっついているほたるが、ぐい、と彼を引き戻した。

「ほほほ。やっと気を遣ってくださったのね」

 そう言って笑いながら、しっしっと扇を振り、ほたるは呉羽と右丸が見えなくなってから、改めてそはや丸に向き直った。

「お会いしとぅございましたわ」

 あこめ扇を広げ、にこりと笑う。
 素直に振る舞えば、左大臣家に仕える女官だ。
 見目も悪くない。
 立ち振る舞いも雅で、洗練されている。
 そはや丸は、ほたるをじっと見た。

「あなた様が、あれ以来いらしてくれませんので、恥を忍んでわたくし自ら、お礼にかこつけて、来てしまいました」

 そして、ぺこりと頭を下げた。

「右丸を救ってくださって、誠にありがとうございました」

 先程までとは打って変わって、しおらしい態度だ。
 そはや丸は、ふんと鼻を鳴らした。
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