妖(あやかし)狩り・参~恋吹雪~
「それでね、ほたるさんは、そはや丸のことを慕っちゃったのね」

「はあぁっ?」

 いきなり呉羽が、目と口を大きく開けて叫んだ。
 烏丸が驚いて、腕の中で飛び上がる。

「あいつを慕う? 何でだよ。何か妙な術でも使ったのか? 女官殿、それは絶対おかしいぞ!!」

 あり得ない、と悶絶する呉羽に、烏丸は驚きながらも小首を傾げる。
 一方右丸は、微妙な顔だ。

---巫女様・・・・・・。認めたくない気持ちが強いのだろうか。・・・・・・いやでも、何かおかしいぞ---

 ようやく右丸も、己の考えと呉羽の考えのズレに気づいたようだ。
 腕を組み、今までのそはや丸と呉羽の関係を思い返してみる。
 あくまでも、知っている限りで、だが。

 考えてみれば、もっぱら呉羽にべたべたしているのは、そはや丸のほうだ。

---もしかして・・・・・・---

 右丸の顔が明るくなる。

「み、巫女様っ。巫女様自身は、彼のことを・・・・・・」

 きっと呉羽は別に、そはや丸のことを慕っているわけではないのだ。
 そう思い、確かめようと、勢いのまま口を開いた右丸だったが、いきなり呉羽の表情が変わった。
 烏丸も、びくっという風に、呉羽にしがみつく。

 呉羽は鋭い瞳で、簀の子の先---元いた部屋のほうを睨む。
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