妖(あやかし)狩り・参~恋吹雪~
「まず・・・・・・ここに女官殿が来られて、私はそはや丸を女官殿に託しました。屋敷までは、何事もなく着いたのでしょう?」

「そうですわね」

 不承不承、といった感じで、ほたるは答えた。

「道中は姿が見えませんでしたが、目眩ましの術を使っておられるのだろうと、わたくしは彼を信じました。わたくしを裏切ることなく、ちゃんと彼はわたくしが右丸の元へと戻った途端、現れましたしね」

 どこかうっとりと、ほたるは言う。
 呉羽は一つ頷く。
 要所要所に挟まれる、よくわからないほたるの表現は無視し、ちらりと横の右丸を見た。

「お前は? その辺のこと、覚えてるか?」

「え? う~ん・・・・・・。ほたる様が戻って来られたのは、知りませんでした。というか、私は初め、ほたる様がそこまでしてくださっているとも知らなかったので」

 そう言って、ほたるにぺこりと頭を下げた。

「本当に、有り難うございます。わたくしがこうしていられるのも、ほたる様のお陰です」

「まぁほほほ。よろしいのよ。他ならぬ右丸が苦しんでいたのですもの」

 今までの慇懃無礼な態度とは打って変わり、ほたるは右丸に優しく微笑む。
 そういえば、この二人は姉弟のようなものだとか言ってたっけ、と思いつつ、呉羽は、じっと二人を見た。

 ほたるも、本当のところは良い人なのかもしれない。
 いくら姉弟のように育ったとはいっても、その弟のために、一人でこのような地に乗り込んで来るなど、よっぽどだ。
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