妖(あやかし)狩り・参~恋吹雪~
「・・・・・・わからん。不快でない、というだけかなぁ。ヒトの外見などに興味もないし、綺麗だとか整っているとかも、よくわからん」

「お姉さん、おいらのことは可愛いって言ってくれるじゃない」

「うん。お前は可愛いよ。それは見てくれというか、態度なんだな。性格というか」

 顔も可愛いけどな、と言いながら、呉羽はぐりぐりと烏丸の頭を撫でる。
 顔といっても、烏丸は見た目烏だ。
 鳥の顔など皆同じだろう。

「とにかくね、ほたるさんは、そはや丸に心奪われてしまっているのね」

 呉羽は渋い顔で黙っている。

「あのね、接吻だけじゃないのよね。うんとね、そはや丸がほたるさんを右丸のところに連れてきたときには、おいらはまだ右丸の中にいたし、どうやってほたるさんを引っ張ってきたのかは、わかんないけど。初めはほたるさん、気を失ってるみたいだった」

 烏丸が、考え考え語り出す。
 烏丸は妖(あやかし)なので、ヒトの身の内にいても、外の状況を覗き見ることができる。
 初めはまだ、外に出るための道も辿っていなかったので、周りを見る余裕もあったのだろう。

「でね、そはや丸が右丸をほたるさんの上に押しつけたのね。でもそのときは、ほたるさんのほうの妖気は弱くて。おいら、一生懸命道を辿ったんだけど、なかなか右丸の中から出られなくって。右丸は気を失っちゃうし、そはや丸は、さっさとしないと右丸がヤバいって言うし」
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