妖(あやかし)狩り・参~恋吹雪~
「ふむふむ。女官殿は、その間ずっと気づいてなかったのか?」

「う~ん、その辺りのことは、もうおいら、周りを見てる余裕はなかったから、わかんない」

 小首を傾げて、烏丸が言う。
 でも、思い出したように、ぽんと羽を打った。

「あ、でも、そうだと思う。途中でね、そはや丸が、ほたるさんと話した・・・・・・。あ、そういえば、ほたるさんの声も聞こえたな。きっと途中で、ほたるさん、気がついたんだと思う」

 呉羽は黙ったまま考えた。
 ヒトを媒体に使う場合、確かに意識はないほうがいい。

 事情を話して理解してもらうのも一苦労だし、そもそもそんな面倒なこと、あのそはや丸がするとも思えない。
 強制的に意識を奪ったのであれば、眼力か・・・・・・?

「二度も意識を奪ったのか。・・・・・・そりゃあ、女官殿の負担は大きかろうな」

 眼力を使って相手に叩き込む妖気は、一瞬で意識を奪うほど強いものだ。
 そのように強い妖気を一瞬で只人(ただびと)に叩き込むことは、相当な負担である。
 せいぜい一回が限度だ。
 それを知らないそはや丸でもあるまいに・・・・・・。

「あいつは本当に、ヒトなどどうでも良い奴だからな」

 そこは禁じてなかったな、と渋い顔をする呉羽に、烏丸がばさばさ、と羽を動かした。

「違うよ。そはや丸、えっと、二回目は・・・・・・」
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