妖(あやかし)狩り・参~恋吹雪~
 思い出しつつ言いながら、烏丸は、ぱっと羽で顔を覆った。
 これが右丸であったなら、顔は茹で蛸のように真っ赤になっていただろう。

 が、今は烏である。
 赤くなってもわからない。
 ただ、恥ずかしそうに羽で顔を覆っている。

「どうした? 違うって、眼力を使ったわけじゃないのか?」

 呉羽が烏丸を抱え上げて、覗き込む。
 烏丸は羽の間から呉羽を見、う~んう~んと唸っている。
 ふと、呉羽は先に烏丸が言っていたことを思いだした。

「・・・・・・口移しがどうとか、言ってたな」

「あ、そうそう。そうなのよ。二回目はね、口移しで・・・・・・」

 何と言うべきか迷っていた烏丸は、ちょっとほっとした様子で、こくこくと頷いた。
 呉羽はまた、少し考え、そっか、と納得したように頷いた。

「そはや丸、帰ってくるなり口を漱(すす)いでたな。そうか、あのときは気にもしなかったが、口移ししたから、女子の気が残って気色悪いとか言ってたんだな」

 そらそうだよな、と一人うんうんと頷きながら、呉羽は聞いた話を元に、当時の状況を整理していった。

「ということは、初めは眼力で女官殿の意識を奪ったのだろう。眼力は妖気を叩き込むが、妖気を身の内に入れるわけじゃない。妖気をヒトに入れるには、やはりそれなりの術を施すか、口移しで入れるか。術を施すのは面倒だし、そはや丸では使えない。だから意識を奪っておいて、あとは口移しで妖気を入れたわけか」
< 51 / 200 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop