妖(あやかし)狩り・参~恋吹雪~
「そうね。一回目は、うん、ほたるさんは意識がなくて、そのほたるさんにそはや丸が口移しで妖気を入れてた。そのときはさぁ、右丸が起きてたから、もう凄かったよ」

 くすくすと笑う烏丸に、呉羽は首を傾げる。

「凄いって? 右丸が起きてたって、凄い苦しんでたとか?」

「ううん。そはや丸が、おいらに右丸を起こせって言うから、おいらが右丸の意識を引っ張り出したのね。で、そはや丸は右丸にいろいろ聞いてから道を作り始めたんだけど」

「へぇ。あいつにしちゃ、ちゃんとしてるな」

「症状を聞いてから、そはや丸、面倒臭そうにしてたよ。右丸ごと斬っちゃうのが一番簡単だって言ってたけど、そうすると、おいらも死んじゃうし」

 烏丸が言った途端、呉羽は、ぎゅっと烏丸を抱きしめた。
 そして、ぐりぐりと小さな頭を撫で回す。

「ほらな。やっぱり何だかんだで、あいつもお前を可愛がってるんだよ」

「そ、そういうわけでもないと思うよ?」

 手荒く撫でられ、若干酔いながら、烏丸は続ける。

「斬らなかったのは、おいらを殺すと、お姉さんに怒られるからだって」

「私の怒りなんて、あいつに効果があるわけないだろ。私がいくら怒っても、その辺のもの摘み食いするし。そんなこと関係なく、お前を殺したくなかったのさ」
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