妖(あやかし)狩り・参~恋吹雪~
「まぁいいや。とにかくね、そいで、ほたるさんに送り込んだ妖気を辿って、おいらは外に出ようとしたんだけど、送り込んだ妖気が少なかったのか、全然進めなくて」

 人の気持ちなどはわからないため、烏丸は話を続ける。

「手こずってるうちに、右丸は苦しんで気を失っちゃうし、ほたるさんは目覚めちゃうし。目覚めちゃったからさ、下手なこと言えないじゃない。ああ、そこで、そはや丸は甘い言葉をほたるさんに囁いたのよ」

「甘い言葉・・・・・・」

 呉羽の首が、大きく傾げられる。

「えーとえーと、何て言ってたかなぁ。確かぁ、『ほたるさんのところに忍んできた不埒者をお許しください』みたいな」

 きゃはは、と楽しそうに笑いながら、烏丸が言う。
 呉羽は、眉間に思いきり皺を刻んだ。
 心なしか、顔も青い。

「気色悪っ! そはや丸が、女官殿に言ったのか? あいつがそんなこと、ただで言うわけないだろうが。後でとんでもない報酬を要求されるぞ」

 もしくは死ぬほどの代償を払うことになるか、と呟き、呉羽は、ぶるっと身体を震わせた。
 烏丸は、微妙な表情でそんな呉羽を見る。

---そはや丸だって、お姉さんは特別に想ってると思うけど。お姉さんのこの態度じゃ、救われないなぁ---
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