妖(あやかし)狩り・参~恋吹雪~
「でね。その言葉で、ほたるさんは、そはや丸に、ころっと・・・・・・」

 再び呉羽が、大きく首を傾げた。

「・・・・・・それだけで?」

「んっと、多分ねぇ、ほたるさんは、その前からそはや丸を好いてたのよ」

「ええ?」

「言ったでしょう~。ああいう気位の高い人は、ちょっと思いがけないほどぞんざいに扱われると、ころっといっちゃうんだって。初めにそんだけ冷たくされて、次会ったときには甘い言葉を囁かれたら、ほたるさんなんてイチコロだよ~。そはや丸も、なかなかやるねぇ」

 う~む、と、相変わらず呉羽の眉間には深い皺が刻まれている。

「・・・・・・で、そはや丸は女官殿に、再び口移しで妖気を送り込んだのか」

 呟いてから、はっとしたように呉羽が目を見開いた。
 がばっと烏丸に顔を近づける。

「女官殿、身を任せたとか言ってなかったか? それ以上のこと、したわけじゃないだろうな?」

「えええっ! お、お姉さん、凄いこと聞くねぇ」

 わたわたと、烏丸が焦る。

「身を任せたってのは、多分願望なんじゃないの? ほたるさん、思い込みが激しいからねぇ」

 おばちゃんのように、頬(?)に羽を当て、烏丸は、ほぅ、と息をつく。
 そして、ちらりと意味ありげな目で呉羽を見た。
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