妖(あやかし)狩り・参~恋吹雪~
「ほたるさんは、そのつもりだったんだろうね。何せ一回目の妖気が少なかったもんだから、二回目はそはや丸も、時間をかけてゆっくり妖気を流し込んだし」

 つまり、長い間接吻してたってことだよ? と言ってみるが、呉羽は、ふーんと呟いただけだった。

「結局接吻しかしてないんじゃないか。それだけで、あれほど・・・・・・」

 わからん、と呉羽は頭を抱える。
 烏丸は、呉羽をじっと見、ややあってから、おもむろに、ちょんちょんと呉羽の膝頭を叩いた。

「ねぇねぇ。お姉さんは、そはや丸のこと、どう思ってるの?」

「ん?」

「ほたるさんがさ、そはや丸をくれって言ったら、あげちゃう?」

「なわけ、ないじゃないか」

 あっさりと言った呉羽に、烏丸は少し驚く。
 が、呉羽は当然といった風に、己の右腕を捲り上げた。

「あいつは妖刀だよ。しかも並みじゃない。そんな危険なもの、おいそれと只人にはやれん」

 晒された右腕の紋様を見、烏丸は、ふぅ、と本日何度目かのため息をつく。

「そうねぇ。こんな紋様刻まれたら、たまったもんじゃないよね・・・・・・て、違うよ。人型のそはや丸を、お姉さんはどう思ってるのよ。お姉さんは男の人が嫌いなんでしょ。でもそはや丸、思いっきり男の人じゃない。何でそはや丸なら平気なの?」

 一人でボケて突っ込んだ烏丸は、言っているうちに熱くなり、ずいずいっと呉羽に迫った。
 迫るといっても、烏なので迫力はないのだが。
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