妖(あやかし)狩り・参~恋吹雪~
離れの戸に手をかけた途端、ちりっと小さく痺れが走ったような感じがし、呉羽は思わず手を引っ込めた。
「危険かもしれませぬ。離れておいてください」
呉羽は一歩下がり、腰のそはや丸に手をかける。
依頼主は途端に怯えた顔になり、すささっと素早く後ずさった。
「ちなみにご主人。やはり娘さんは戻って欲しいですか?」
遙か後方で震えていた依頼主は、しばらくしてから、え、と聞き返した。
この家の様子から、生活が苦しいようには見えない。
家もないような者は、子を捨てたりするが、子供を育てられないほど貧窮しているわけではないだろう。
「も、もちろんでございます! わたくしどもとて、娘が憎くてこのようなところに押し込めているわけではないのです!」
まぁそうだろうな、と思いながらも、呉羽は渋面になる。
娘に完全に取り憑いているのなら、器ごとぶった斬ったほうが楽なのだ。
生まれてすぐ捨てられ、妖の中で育った呉羽は、あまり親子の情というものがわからない。
「一応物の怪だけを退治するよう努力は致しますが、無傷というわけには参らないやもしれませぬ」
ヒトに取り憑いた物の怪というものの退治は、難しいのだ。
後ろで依頼主が、何とぞ、何とぞ、と両手を合わせている。
呉羽はそはや丸に手をかけたまま、離れの戸を引き開けた。
隅に蹲っていた影が、キッと振り向く。
姿を認め、呉羽は室内に入ると、素早く後ろ手で戸を閉めた。
闇の中に、金色の双眸が光る。
「危険かもしれませぬ。離れておいてください」
呉羽は一歩下がり、腰のそはや丸に手をかける。
依頼主は途端に怯えた顔になり、すささっと素早く後ずさった。
「ちなみにご主人。やはり娘さんは戻って欲しいですか?」
遙か後方で震えていた依頼主は、しばらくしてから、え、と聞き返した。
この家の様子から、生活が苦しいようには見えない。
家もないような者は、子を捨てたりするが、子供を育てられないほど貧窮しているわけではないだろう。
「も、もちろんでございます! わたくしどもとて、娘が憎くてこのようなところに押し込めているわけではないのです!」
まぁそうだろうな、と思いながらも、呉羽は渋面になる。
娘に完全に取り憑いているのなら、器ごとぶった斬ったほうが楽なのだ。
生まれてすぐ捨てられ、妖の中で育った呉羽は、あまり親子の情というものがわからない。
「一応物の怪だけを退治するよう努力は致しますが、無傷というわけには参らないやもしれませぬ」
ヒトに取り憑いた物の怪というものの退治は、難しいのだ。
後ろで依頼主が、何とぞ、何とぞ、と両手を合わせている。
呉羽はそはや丸に手をかけたまま、離れの戸を引き開けた。
隅に蹲っていた影が、キッと振り向く。
姿を認め、呉羽は室内に入ると、素早く後ろ手で戸を閉めた。
闇の中に、金色の双眸が光る。