妖(あやかし)狩り・参~恋吹雪~
「大丈夫だよ! おいらは飛べるもの。ここまでは、猫又だって来られないよ」

「そこから動くなよ!」

 呉羽はそはや丸を抜いた。
 ぶわ、と噴き出した妖気に、猫又の動きが止まる。

「・・・・・・お姉さん。右の足元に気をつけてね」

 言われてじりじりと右足を動かすと、何かが、がしゃ、と当たった。
 ちらりと見ると、残飯の入った器だ。

 器は倒れていないが、気づけば足元はべたついている。
 注意しないと、勢いが付いたら足を滑らすかもしれない。

 呉羽は闇に目を凝らした。
 まだ目は慣れない。

「烏丸、奴はどんな姿だ?」

 油断なくそはや丸を構え、呉羽は頭上の烏丸に問うた。

「ん~、ぱっと見はヒトに見えるよ。でも、目が光ってるし、牙がある。多分、爪も」

「ぱっと見はヒトってことは、切り離すのは今か」

 完全に取り込まれたなら、見てくれは猫寄りになる。
 一目で人外だとわかるぐらいになってしまうと、簡単には切り離せない。

 呉羽は踏み込み様、そはや丸を振るい、猫又に向けて妖気を放った。
 さしもの猫又も、そはや丸の強烈な妖気に驚いたようだ。
 焦ったように、大きく飛び退いた。
 とん、と部屋の隅におり、シャアァッと威嚇する。
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