妖(あやかし)狩り・参~恋吹雪~
 その隙に、呉羽は懐に手を突っ込み、何枚かの札を掴みだした。
 素早く己の周りに撒き、小さく呪(しゅ)を唱える。
 
 呉羽の周りに散らばった札が、僅かに発光し出した。
 猫又が、呉羽に飛びかかる。

「ちっ」

 まだ発光は僅かだ。
 気を見ながらしか、呉羽は動けない。

「お姉さん! 危ないっ」

 烏丸の叫びに、一旦屈んで猫又を避けた呉羽は振り返った。
 その頬を、猫又の爪が掠る。
 呉羽のすぐ背後に降り立った猫又は、獣ならではの俊敏さで、再び床を蹴り、呉羽に襲いかかった。

「お姉さんっ!」

 再びの烏丸の叫びと共に、猫又が、ぎゃっと叫んだ。
 猫又の肩目掛けて、烏丸が突っ込んだのだ。

 烏丸の鋭い嘴が、猫又の肩に食い込む。
 猫又は爪で、肩に刺さっている烏丸を引き裂こうとした。

「烏丸っ」

 呉羽が慌てて烏丸に飛びつき、そのまま猫又を蹴り飛ばして床を転がった。
 烏丸目掛けて振り下ろされた爪は、呉羽の背を裂いたが、蹴られた猫又のほうも、仰向けにひっくり返る。

「・・・・・・っつぅ・・・・・・」

 呉羽は背の痛みに耐え、抱いた烏丸を、梁へと投げ上げた。
 ふらふらしながらも、烏丸は猫又の届かない梁の上に避難した。
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