妖(あやかし)狩り・参~恋吹雪~
「お、お姉さん。大丈夫?」

「大丈夫だ。お前はそこで、大人しくしててくれ」

 背中はどの程度裂かれたのか。
 血の流れる感触がするので、かなり深い傷かもしれない。

 よろめきながら、呉羽はそっと右手を背中にやった。
 思った通り、べっとりと血が付く。

---ま、血は必要だから、丁度良い---

 呉羽はじりじりと、さっきの場所まで移動した。
 呪を書いた札と血で、小さな結界を張る。

 烏丸を右丸から出したように、娘の中から猫の妖(あやかし)を引き出すのだ。
 引き出す方法は同じだが、今回は引き出すモノが邪悪なモノであるため、引き出した瞬間に滅さなければならない。
 逃がすわけにはいかないので、逃げられないよう結界が必要なのだ。

 呉羽は猫又の様子を窺いながら血で呪を書き、結界を張っていっていたが、猫又も大人しく見ていてくれるわけではない。
 その結界が、己にとって有り難くないものだと気づくや、邪魔をしようと呉羽を攻撃する。

 右に左に繰り出される爪を避けながら、懸命に結界を張る呉羽は、やがて結界の一部だけを残して、大きく飛び退った。
 落としていたそはや丸を手に取り、猫又に向ける。
 最終的にはあの結界内に、猫又を入れなければならない。
 それからでないと、引き出せない。

 そはや丸を構える呉羽の足が震える。
 指先が氷のようだ。

---血が流れすぎたか・・・・・・---
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