妖(あやかし)狩り・参~恋吹雪~
 結界の発光が先程より強くなっているため、今はそう集中しなくても、周りは見える。
 神経まで集中させないでも良くなったのは有り難いが、早くしないと己が危険だ。

 呉羽は、ずいっと猫又に近づいた。
 猫又は四つんばいになり、慎重に隙を狙っている。

 呉羽はさらに踏み出すと同時に、そはや丸を突き出した。
 そはや丸を避け、猫又が高く飛ぶ。
 そして呉羽を飛び越えて、背後から襲いかかった。

---今だ!---

 呉羽は振り返ると同時に、結界に足を踏み入れた。
 呉羽を追って、猫又も結界に飛び込む。
 飛びかかってきた猫又ともみ合いになりながら、必死で呉羽は己が入った結界の隙間に、最後の呪を書こうと手を伸ばす。

 が、結界は狭い。
 そんな大きな結界を張る余裕もなかったし、そんな体力もない。

 しかし狭い結界に猫又と一緒に入ると、俄然危険も増す。
 反対側の結界にぶち当たった猫又は、必死で結界を閉じる呉羽に、めちゃくちゃに襲いかかる。
 結界内を転がり回りながら、呉羽は猫又から逃げつつ、呪を書き続けた。

---あと一文字・・・・・・!---

 ようやく結界が完成する、と思った瞬間、気が緩んだのか、呉羽の手から、そはや丸が弾き飛ばされた。
 同時に、左肩に強烈な激痛。
 そはや丸は、結界の壁に弾かれて、少し離れた床に突き刺さった。
< 69 / 200 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop