妖(あやかし)狩り・参~恋吹雪~
 烏丸が、ちょいちょいと羽で呉羽の腕を叩いた。

「ねぇ、右丸に会いに行くことは、できないかな?」

 長く右丸と一緒に生きてきた烏丸は、右丸の気持ちもわかっている。
 というか、わかっていないのは呉羽だけなのだが。
 烏丸としては、できることなら応援してやりたいところなのだ。

 が。

「無理だなぁ。ほら、お前に呼ばれたときも、私は行けなかっただろ。あんな大貴族の屋敷、向こうから呼ばれない限り、足を踏み入れられるところではないしなぁ」

 さして困った様子もなく、呉羽は言う。
 別に呉羽は右丸に会えなくても良いからだ。

「もしかして、お前は右丸に会いたいのか?」

 烏丸を両手で抱え上げ、顔を近づける。

「お前なら、飛んでいけば会えるんじゃないか? 見かけは烏なんだし」

「そうかもしれないけど・・・・・・」

 ため息交じりに、烏丸が言う。
 右丸と呉羽を会わせてやりたい烏丸にとっては、自分だけが行ったところで意味はない。

「まぁ、一度は会っておいたほうが良いだろうけどな」

 烏丸を膝の上に降ろし、呉羽が言う。

「え、お姉さんも右丸に会いたい?」

「いや、そうじゃない」

 ぴょこんと顔を上げた烏丸の言葉を秒殺した呉羽は、そはや丸を振り返る。
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