妖(あやかし)狩り・参~恋吹雪~
「うっ・・・・・・くぅ・・・・・・」

 うつ伏せになった呉羽の上に猫又がのしかかり、爪を左肩に食い込ませている。
 うなじに荒い息がかかり、ぽたりと唾液が落ちてきた。

---いかん。早くしないと、切り離しが難しくなる---

 おそらく猫又は、呉羽の首に牙を立てるつもりだ。
 どんどん人間離れしている。

 呉羽は肩の激痛に耐えながら、懸命に伸ばした右手で、最後の呪を書いた。
 途端に結界が強度を増す。

---やった・・・・・・!---

 結界を完成させ、呉羽は少し安堵した。
 が、依然押さえつけられたままだ。
 爪の食い込んだ肩から流れた血が、呉羽の頬を濡らしている。

 頭上で、烏丸が忙しなくばさばさと羽ばたいている。
 結界が完成してしまったので、助けようにも入れないのだ。

---くそ。仰向けだったら、まだ何とかできたものを・・・・・・---
< 70 / 200 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop