妖(あやかし)狩り・参~恋吹雪~
「何する気だよ」

 目は猫又に据えながら、そはや丸が言う。
 猫は元々警戒心の強い動物だ。
 凄まじい妖気を向けられ、猫又は今のところ、動けないでいる。

「お前が引き出してくれないのなら、私がやるしかない。陰の気が嫌なんだったら、私の気だって嫌だろ。口移しが一番簡単だが、ここでお前の機嫌を損ねたら、私が上手く引き出せても、万が一のときに助けてくれないだろうからな。移しの術で、妖気をわけてもらう」

 もっともそれまで、猫又が大人しくしておいてくれるとも思えんが、と呟きながら、呉羽は取り出した札に息を吹きかけた。
 呉羽が猫又を引き出した場合、注意しないと、今度はその猫又が、呉羽に取り憑くのだ。

 口から吸い出す方法は、簡単ではあるけども、身体の中に入れるため、危険も伴う。
 ただでさえ女子の陰の気は、妖気と結びつきやすいため、引き出すことはできても、己の中から退治することは難しいのだ。

 呉羽が術を施した札をそはや丸に翳そうとしたとき、猫又が、じり、と動いた。

「やばいな。早くこれに妖気を移してくれ」

 ぐい、と札を差し出す呉羽の腕を、そはや丸が掴んだ。

「ふん。そんなふらふらで、自分で対処できると思ってんのか。俺が嫌がってんのは、お前以外の女子に接吻することさ」

 そう言って顔を近づけると、ぽかんとしている呉羽の口に、己の口を重ねた。
 強い妖気が、身体に入ってくる。
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