妖(あやかし)狩り・参~恋吹雪~
「一旦お前の中に、猫又を入れな。そうすりゃ、お前の中から、俺が吸い出してやる」

 唇を離し、そはや丸は飛びかかってきた猫又に、拳を打ち付けた。
 鼻っ面を打たれ、ぎゃ、と叫んで猫又が転がる。

 その猫又に、呉羽が飛びかかった。
 何も考えず、猫又の娘の口に、己の口を付ける。

 呉羽に爪を立てて暴れていた娘が、やがて、びく、と痙攣する。
 苦しそうに身体を反る娘に馬乗りになり、呉羽は少し顔を離した。
 が、呉羽と、娘の口の間は、不穏な空気で結ばれている。

 呉羽は娘の胸を押しつつ、大きく息を吸い込んだ。
 娘がさらに苦しそうに、顔を歪める。

 そはや丸は、少し苛々しながら、その光景を睨んでいた。
 猫又が、なかなか娘から出ない。

 元々この猫又は、端からこの娘を狙っていたのだ。
 たまたまあった器でない分、執着もあるので、そう簡単に引き出せなくてもおかしくはないのだが、長引けば呉羽の身が危険だ。

 いつもなら、あまり心配はしないそはや丸だが、今の呉羽は背と肩に深い傷を負っている。
 今までに、かなりの血が流れた。
 おそらくそろそろ、意識がなくなるだろう。

---ったく、何だってこんな大怪我したんだ。こんな妖ごときに、やられるような奴じゃねぇってのに・・・・・・---

 血だらけで妖を吸い出す呉羽に苛々しながら、そはや丸は頭上を見上げた。
 烏丸が、ばさばさと飛び回っている。
 そはや丸と目が合うと、烏丸は急降下して、結界のすぐ外に来た。

「そはや丸っ! お姉さんはっ? 大丈夫なの?」

 必死で訴える。
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