妖(あやかし)狩り・参~恋吹雪~
「・・・・・・あ~あ。血で汚れてんな」

 引っ張り出した札を、ぺいっと捨てる。

「ちょっとずつ引き出すしかねぇな」

「血で汚れちゃったら、浄化の力はなくなっちゃうの?」

 床に捨てられた札を見ながら言う烏丸に、そはや丸は、ちょっと首を傾げた。

「さぁ。でも文字が消えてるだろ。それじゃ意味ねぇ。まぁ初めっから懐に入れてたんだし、呉羽だってそれなりの術者だ。俺を取り憑けて平気な奴だぜ。こんな猫又ぐらい、何でもないさ」

 それよりも、と、すぐ傍に横たわる娘を見る。
 猫又に取り憑かれていた、依頼主の娘だ。
 そはや丸は、邪険に足で娘を転がした。

「ふ~む。もうヒトに戻ったようだな。おい烏丸、こいつから妖気は、感じられないか?」

 それなりに愛らしい娘を、足で転がすそはや丸に驚きつつ、烏丸は娘に近づいた。

「ん~・・・・・・そうね。妙な気は、もう感じないかな」

 そはや丸では自身の発する妖気が強すぎるので、返って微弱な妖気は感じられないのだ。

「よし。まぁ後から呉羽に護符でも送らせれば良いだろ。まずはここから、どう帰るかだなぁ」

 頷き、そはや丸は小屋の中を見回した。
 ここに来たときは、呉羽と烏丸二人だけの状態だった。
 そはや丸は刀だったので、依頼主に姿は見られていない。

 来るときはいなかった者が、いきなり現れるのもおかしいし、何より依頼主に状況を説明しないといけないだろう。
 報酬だって貰わねば。
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