妖(あやかし)狩り・参~恋吹雪~
「お前がちゃんと後始末までしてきたのか、ちょっと信じられないしな」

「言ってくれるね。お前に言われたことは、ちゃんとこなしたろうが」

 ふん、と鼻を鳴らして、そはや丸が応じる。
 まぁそうだが、と呟きつつ、呉羽は、じ、と烏丸を見下ろした。

「お前が右丸を気にするのも、まだ繋がりが残ってるからってのも、あるだろうしなぁ」

 でもなぁ、と呉羽は、雪の降り注ぐ庭を見つめた。
 膝の上から呉羽を見上げ、烏丸は彼女に見惚れる。
 ぼんやりと雪を見つめている呉羽は、さながら貴族の姫君だ。

 何度も言うが、黙っていれば美しいのだ。

 ふと烏丸は、そはや丸を見た。
 彼も、じっと呉羽を見つめている。

「でも残念ながら、そう簡単には会えないしね。しょうがない」

 言うなり、呉羽は烏丸を抱き寄せ、そのままごろりと仰向けに転がった。
 そはや丸が、ふ、と息をつく。
 そして、よっこらせ、と腰を上げた。

「ああ、つまんねぇな。どうせこんな日は、依頼もないだろ。ちょいと外を回ってくる」

 そう言って、さっさと簀の子を歩いていく。

「じゃあついでに、さっき烏丸が見つけた死体から、まだ頂けるものがあったら貰ってきてくれ。烏丸だけじゃ、持ちきれないものもあっただろ」

「お姉さん・・・・・・がめつい・・・・・・」

「いいんだ! 変に供え物を置いたって、死者が使えるものじゃないだろ。供物狙いの泥棒とかに荒らされるよりは、外法師の端くれにくれてやったほうが、まだマシだって思ってくれるはずだ」

 納得できるような、できないような。
 そんな言葉を背中に聞きつつ、そはや丸は屋敷を後にした。
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