妖(あやかし)狩り・参~恋吹雪~
「・・・・・・」

 呉羽は刀のそはや丸を支えに、依然倒れたままのとよに近づいた。
 じっと様子を窺い、頬を叩いてみる。

「とよさん、聞こえる?」

 耳元に口を寄せて呼んでみるが、反応はない。
 そはや丸に足蹴にされても起きなかったのだ。
 そんな生易しい方法では起きないだろう。

 烏丸が、ばさばさ、と羽をはためかせて、娘の耳元で、ぎゃあっ! と鳴いた。
 途端に、びくんと、とよが痙攣する。

「とよさんっ!」

 もう一度呼んでみると、とよはゆっくりと目を開けた。
 そして、呉羽を見るなり、ぱちりと大きく目を見開く。

「あ、あら? 私・・・・・・」

 きょろきょろと、周りを見渡す。

「落ち着いて。えっと、あなたは自分がここ最近どういう状況だったか、わかっていますか?」

 娘と話し出して気づいたが、すっかり夜も更けたのに周りが見える。
 大暴れしたため、元々掘っ立て小屋だった離れは、ところどころ穴が空いている。
 結界の勢いに空いたのであろう屋根の穴から、月明かりが入ってきているのだ。

 この程度の明かりなら、とよには呉羽の大怪我も見えまい。
 余計なことに気を回さず、とっとと話を聞きたい呉羽は、そはや丸に縋りながら、早口で娘に問うた。
< 80 / 200 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop