妖(あやかし)狩り・参~恋吹雪~
「旦那様に懸想した白拍子が、いろいろ嫌がらせを仕掛けてきたのよ。庭にいっぱい蛙が湧いたり、夜具がびしょびしょになったり。ちゃちい辻占師にやらせてたみたい。でも段々度を超してきて。最近は、そうね、私が何だか、変になってたわ」

「自覚があったわけですか」

「あなたが来たのも、わかってたわ。でも途中から、意識がなくなっちゃったけど。私、必死であなたに助けを求めたのよ。今回ばかりは、怖かったもの。私自身に、妖が取り憑いたわけだし」

 なかなか肝っ玉の据わった娘だ。
 度重なる嫌がらせで、返って耐性ができてしまったようだ。

 なら話は早いや、と呉羽は息をついた。
 そろそろ、しんどくなってきた。

「もう大丈夫です。お身体は、どうですか? まだ妙な感じがするとかは?」

「ないわ。だって、木っ端微塵に滅してくれたでしょ? 私から妖をおびき出すためとはいえ、あんな殺気を向けられちゃ、そりゃ妖だって焦って飛び出すわよ」

「え?」

 とよから妖を吸い出そうとはしたが、殺気を向けた覚えはない。
 が、とよは気にせず、明るく笑った。

「もう、私ごと滅せられるかと思った。まぁ・・・・・・妖に憑かれた娘なんて、そんな末路かなぁとも思ったけど」

 この時代、妖に憑かれるということは、珍しいことではない。
 病も天候も、全て妖や物の怪の仕業なのだから。
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