妖(あやかし)狩り・参~恋吹雪~
「でも、救ってくれて有り難う。さすが、都一の外法師様よね」

 ぺこりと頭を下げ、娘は立ち上がった。
 そして、あれ? ときょろきょろする。

「確か、式神がいたはず・・・・・・」

「式?」

「そうよ。外法師様をお助けするのが、式神のお役目でしょ? 外法師様の手足となって働くものだって、物語で読んだわ」

 なかなか物知りである。
 字が読める辺り、親は結構この娘に期待しているのだろう。
 あの依頼人は、受領程度の位はあったのか。

 それなら財もたっぷりあるはず。
 こちとら大怪我負ったんだ、報酬はがっぽり頂いてやる、と思っていると、娘は呉羽の肩に目をやった。
 肩にはちんまりと、烏丸が止まっている。

「それも式神?」

「ん? ああ・・・・・・まぁそうですね」

 面倒なのでそう返事をし、呉羽は立ち上がろうとして、よろめいた。

「まああぁぁ~~~っ!! 外法師様っ! 血だらけじゃありませんかぁぁっ!」

 途端にとよが、叫び声を上げる。
 ち、と小さく舌打ちし、呉羽はそはや丸を支えにしながら、考えを巡らせた。

 このままこの家で手当てなどされたら厄介だ。
 それなりの治療は受けられるかもしれないが、足留めされるのは御免被りたい。
 
 それに何より、右腕の、そはや丸の紋様は、ヒトに見せられる代物ではない。
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