妖(あやかし)狩り・参~恋吹雪~
「だ、大丈夫です。わ、私は外法師ですから、家に帰ればそれなりの薬も常備してありますしっ」

 無理矢理身体を起こす呉羽に、とよは、ぽん、と手を打った。

「先の式神を呼べばいいじゃない。外法師様を支えてたから、力はあるでしょう」

「私を支えて・・・・・・?」

 何のことだろう。
 実際のところ、式神というものは、連絡や何かの探索に使うだけのものである。
 物語に出てくるような、貴族の屋敷のように身の回りの世話をする女房のように働いてくれる式神を使える者など、滅多にいないのが現実だ。
 が、とよは相変わらず明るく言う。

「そうそう。まだ私の中に妖がいるときにね、ちらっと見えたの。外法師様の傍に、誰かいたわ。その鳥ではなかった。人型に見えたし。何だか常に外法師様を守ってるみたいだったし、あれは外法師様が用意した、式神でしょ?」

「・・・・・・」

 呉羽の傍にいた、烏丸でないモノなら、それはそはや丸だ。
 そういえば、あいつの人型は久しぶりだ、と思い、呉羽は握っている刀を見た。

「式神って、あんなに従順に自分を守ってくれるのね。いいなぁ」

「従順・・・・・・ではないですよ。使い方を誤れば、己に跳ね返ってきますからね」

 あえて詳しく誤解を解く気もないが、特殊な術を使うことの怖さは教えておく。
 遊び半分で式神をくれと言われることもあるからだ。

 が、とよはそういった怖さはすでに理解しているようで、そっか、と軽く答えた。
 そして、戸を押し開く。
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