妖(あやかし)狩り・参~恋吹雪~
「父様に、治りましたって報告しないと。またこんなところに閉じ込められたら、かなわないわ」

 そう言って、母屋のほうへと駆けていく。
 ふぅ、と息をつき、呉羽はその場に膝を折った。

「お姉さん、大丈夫?」

 ばさ、と烏丸が飛びながら言う。
 とよが見えなくなってから、そはや丸が人型になった。

「・・・・・・俺は式神か。まぁそう思い込んでんのなら、そう思わせておこう」

 呟いて、蹲っている呉羽を再び抱き上げる。
 じ、とそはや丸を見、呉羽は少し安心したように、身体の力を抜いた。
 そこへ、依頼主が血相変えて飛んでくる。

「げっ外法師様あぁぁっ!!」

 どどどっと呉羽の傍まで走り寄り、依頼主はその場にがばっと平伏する。

「あああ有り難うございましたあぁぁっ! 娘が、娘が全く普通に・・・・・・!」

 涙と鼻水でぐちゃぐちゃになった顔で、依頼主は喜びを露わにする。
 ちょっと引きつつも、呉羽はそはや丸の腕の中から、挨拶を返した。

「よぅございました。手強い相手だったため、このような格好で申し訳ない」

「あ、は、はぁ・・・・・・」

 依頼主は手燭を持っていたが、地面に置いているので、呉羽の身体が血まみれなのには気づかない。
 それ以前に、己の嬉しさのほうが数倍も勝っているため、あまり他に考えが及ばないようだ。
 一応抱き上げられている状態なので、大丈夫なのですか? とは声をかけるが、積極的に呉羽の状態を見ようとはしない。
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