妖(あやかし)狩り・参~恋吹雪~
「本来なら、宴なりと催したいところですが、見れば外法師様はお疲れのご様子。娘も元気になったとはいえ、まだ無理はさせられませぬ」

「お気遣いなく。ちょっと怪我をしまして、式の助けを借りております。娘さんは、大丈夫ですよ。憑いていた妖は、きちんと骨に戻しましたから」

 呉羽の言葉に満足そうに頷き、依頼主は、さ、と門のほうへと呉羽を促した。
 そこには牛車が一台、用意されてある。

「せめてものお礼です。どうぞ、こちらでお帰りください。あの、報酬ですが」

 言いながら、依頼主が懐から出した小さな袋を呉羽に渡す。
 袋の小ささに、一瞬そはや丸の腕から、ぴり、と妖気が迸るのがわかったが、受け取った呉羽は、手にした袋の感触に、少し驚いた。

「・・・・・・有り難うございます」

 それだけ言って、そはや丸を牛車に促す。
 頭を下げ続ける依頼主が見えなくなってから、そはや丸が不満そうに舌打ちした。

「何であれっぽっちで納得したんだ」

 じろ、と睨むが、腕はしっかりと呉羽を抱いたままだ。
 牛車の振動が傷の負担にならないよう、気をつけている。
 そはや丸のそんな気遣いを知ってか知らずか、呉羽は、ふふ、と笑うと、先程受け取った小袋の口を開いた。

「見ろ。砂金だ」

 口を開いた袋を、ずいっと突き出す。
 呉羽の手の平にすっぽり納まるぐらいの袋だが、一杯に砂金が詰まっている。
 相当な量だ。
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