妖(あやかし)狩り・参~恋吹雪~
「そ、それはお前のほうだろうが」

 こいつは一体、何を言ってるんだと思いつつ、そはや丸はとりあえず、話の矛先を呉羽に向けた。

「お前はヒトだろ。同じヒトの右丸に告白された。でも、俺が憑いてるから、お前は右丸と添えない。もしかしてお前、俺がお前から離れれば、それぞれ想い人と添えるのに、とか思ってるんじゃないだろうな」

「・・・・・・私のことはともかく、お前はそうなのかもって」

 呉羽らしくもなく、俯いたまま、ぼそぼそと言う。
 そはや丸にも、訳がわからない。

 刀であるそはや丸が、ヒトと添うなどあり得ないことではないか。
 今の話の四人で、添うのに何ら問題ないのは、呉羽だろうに。
 なのに自分のことはともかくって何だ。

「もしお前が、本気で女官殿と添いたいと思ってるのなら・・・・・・右腕、斬り落としてくれ」

 そう言うと、こと、と床に粥の器を置いて、呉羽はいきなり、そはや丸にしがみついた。

「止血もいらん。今すぐ、斬り落とせ」

「落ち着けよ。今そんなことしたら、お前、死ぬぜ」

「いいよ。お前が女官のところに行くのを、見なくていいもの」

 胸にしがみついて言う呉羽を、そはや丸は驚いて見つめた。
 腕の中の呉羽が、酷く頼りなげに思える。
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