妖(あやかし)狩り・参~恋吹雪~
「・・・・・・右丸がヒトだろうが妖だろうが、端からそういう対象ではないってことか」

 そはや丸の口元に、いつもの邪悪な笑みが浮かぶ。
 それがわかれば安心だ。
 そう思い、またそはや丸は少しだけ、己の心に動揺する。

「さぁ、とりあえず寝てろ」

 動揺を悟られないよう、そはや丸は呉羽を床に寝かせた。
 呉羽は薄目でそはや丸を見つめている。
 熱に浮かされているせいだろうが、潤んだ瞳が泣いているようで、そはや丸は落ち着き無く、呉羽から視線を逸らせた。

 呉羽はそはや丸を、じっと見る。
 もう長いこと共にいるが、これほどまじまじとそはや丸を見ることなど、なかったように思う。

 顔立ちは、悪くないように思う。
 だが身なりは単を重ねただけの着流しだし、髷も結わずにいるなど、都人にはあり得ない。
 地下人の最たる者、とでもいう格好だ。

「・・・・・・あんな高級女官に見初められるなんて、凄いねぇ」

 実際はほたるの階級など知らないが、左大臣家に仕えているというだけで、結構な身分なのではないか。
 加えてあんな自尊心の高そうな女子、そはや丸のような者と口を利くのすら嫌がりそうなのに。

 しみじみと言った呉羽に、そはや丸は、思いきり嫌な顔をした。
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