How to KISS
なんだ、知らない人ね。


たった5秒で二度も恥をかかせるなんてなんて奴よ。

そう苛立ちながら、鞄からサングラスを取りだしてかける。

ヒールが響かせるリズムが心なしか速くなったのはご愛嬌。

ピンヒールにしなくてよかったと、心底思うわ!


 ああ、もうっ!

はやくアルコールに口づけしたい!


けれど、この時間から酒を煽るだなんて、そんなスマートじゃないこと私にさせられない!


 ん~もうっ!こんなと…

「やあ、なんで無視するんだい?セクシーな脚のお嬢さん…ああ、それよりもなんてキュートな唇なんだい!?今すぐキスしたくなる唇だね」

そんな、軟派なことばとともに先程の彼に肩を叩かれた。

「ああ、ごめんなさい、気付かなかったわ」

そう言って、サングラスを外して照れ笑いをしてみせる。

あら?勘違いではなかったのかしら。

「楽しくショッピング?」

そう、ボンボンの入った紙袋を指して言う。

「ええ、まあ、そんなところね」

「そう、よかったら荷物持ちするよ!あー、今車停めてくるから待ってて!」

そう言って彼は車へと駆けて行った。


んー…優柔不断は嫌だし、強引なところがとても素敵だけれどやっぱり主導権は握られたくないわね。

ふふっ、と車に手をかける男を見届けてから踵をかえす。
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